研究概要 |
1.ERK-MAPキナーゼ系が恒常的に活性化されている癌細胞株での解析より,ERK-MAPキナーゼ系とRhoA系の間にクロストークがある可能性が示唆された。そこでその実態解明を進めたところ,ERK-MAPキナーゼ系によってRhoA特異的GDP/GTP交換因子(GEF)の発現が亢進する事,さらにそれはERK-MAPキナーゼによるリン酸化によって活性化される事を見出した。RhoA系の恒常的活性化は細胞がん化を誘導する事が報告されているが,上記知見はERK-MAPキナーゼ系の下流でRho経路が活性化され,それが細胞がん化促進に寄与している可能性を示唆する。 2.c-Jun N-terminal Kinase(JNK)が細胞増殖制御に関与する可能性を検討すべく,JNK経路が恒常的に活性化されている癌細胞株(T24及びPC3細胞)にJNK阻害剤(SP600125)を添加し、あるいはJNKのDominant Negative遺伝子を導入したところ,ほぼ完全な増殖停止が誘導された。細胞周期動態の解析より,上記条件下ではG2/M期細胞が顕著に増加している事を見出し,これよりJNKがG2/M期進行、特に細胞質分裂の制御において重要な役割を果たしていることを明らかにした。そこで,JNKによる細胞質分裂制御の分子機構を明らかにすべく,G2/M期に特徴的にリン酸化が亢進し、それがSP600125処理で阻害されるタンパク質の同定を進めた結果,中間径フィラメント成分である「ケラチン」を、極めて有力な候補分子として見出した。現在,ケラチンリン酸化と細胞質分裂制御の関連を解析中である。
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