研究概要 |
薬剤輸送におけるABC(ATP-Binding Cassette)トランスポーターの重要性が認識され、その機能解析が世界的に注目されている。薬物輸送に関与するヒトABCトランスポーターの基質特異性をスクリーニング解析して創薬に応用する基盤構築が必要である。本プロジェクトにおいて石川の研究グループは、ABCC11、ABCC12、ABCC13等の新規ABCトランスポーターをクローニングする一方、多様な薬物に対するABCトランスポーターの基質特異性を解析するために、自動化高速スクリーニングシステムを確立した。そして分子構造を表すケミカルフラグメントコードを用いた定量的構造活性相関(QSAR)の解析方法を開発した。当該解析方法を用いた応用例として、ABCG2のSN-38輸送の構造活性相関を解析し、ABCG2の基質にならない誘導体を同定した。そのSN-38誘導体は、ABCG2を高発現して抗癌剤に耐性の癌においても制癌剤として有効であることがin vitroの実験で明らかになった。一方袖岡の研究グループは、カンタリジンを出発点として構造展開を行い、プロテインボスファターゼ(PP)1,2Aに対して全く阻害を示さず、PP2B選択的な阻害剤の開発に成功した。また、RIIペプチドを基質として用いた詳細な阻害試験を行った結果、PP2Bに対するIC_<50>が7μM程度と、人工基質であるp-nitorophenyl phosphateを用いた場合よりもより低濃度で阻害を示すことが明らかとなった。さらに、プロテインキナーゼC(PKC)の全く新しいリガンドを設計・合成し、ホルボールエステルに匹敵する強力な活性化剤の開発に成功した。構造修飾により、阻害活性を示す誘導体の開発にも成功した。そして癌細胞の遊走や浸潤を強力に阻害する化合物の開発にも成功した。
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