研究概要 |
本研究は,当研究室において構築された遺伝子組換え技術を基に,アルブミン本来の役割である浸透圧維持作用に加え,抗酸化作用や血中滞留性などが付与された,安全性,有効性かつ経済性に優れた機能性アルブミンを開発することを目的として企図され,以下の知見を得た. 1)^<111>In標識したWild及び7つの変異体(H146A, K199A, W214A, R218H, R410A, R410C, Y411A)のマウスでの体内動態特性を検討した結果,血漿中濃度推移は,Wildに対し,R218H, Y411Aではほぼ同様の挙動を示すのに対し,K199A, H146A, W214Aでは若干の,またR410A, R410Cでは明らかに速やかな消失挙動が観察された.また,同様に,R410A, R410Cにおいて,肝臓及び腎臓への高い取り込みが認められた. 2)各種変異体の機能特性について検討したところ,抗酸化能において,R410A, R410Cでは完全にその能力が消失することが明らかにされ,過酸化水素によって短時間で断片化されることが確認された.また,消化酵素認識能についても,R410A及びR410C,またW214Aで素早い断片化が確認され,消化酵素認識能の上昇が観察された.したがって,サイトI領域ではW214A,サイトII領域ではR410Aにおいて,分子全体の構造安定性が極端に低下したため,過酸化水素及び消化酵素等で断片化され,腎へ移行したことが考えられた. 以上,本研究では,サイトII領域の^<410>ArgがHSAの構造安定性,機能特性及び消失に関して重要なアミノ酸残基であることを明らかにした.したがって,今回得られた,消失に関与するアミノ酸残基,^<410>Argの存在するサイトII領域ではなく,構造的により安定でかつflexibleなサイトI領域に,抗酸化能を有すると言われるCys及びMet等のアミノ酸残基を導入することで,消失の抑制されたより安定なアルブミン製剤を開発できるものと思われる.
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