研究課題/領域番号 |
14370762
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岩田 修永 独立行政法人理化学研究所, 神経蛋白制御研究チーム, 副チームリーダー (70246213)
|
研究分担者 |
水上 浩明 自治医科大学, 医学部, 助手 (20311938)
|
キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβペプチド / ネプリライシン / アデノ随伴ウイルス / 遺伝子導入 / 遺伝子治療 / ウイルスベクター / 分解酵素 |
研究概要 |
ネプリライシンはアルツハイマー脳に蓄積し発症の引き金となるアミロイドβペプチド(Aβ)の脳内分解過程に関与する主要酵素である。本研究では、ウイルスベクターを用いてマウス脳へ直接ネプリライシン遺伝子を導入して本酵素活性を高め、脳内Aβレベルを低下させることを目的とする。 昨年度はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの調製と血清型(2型および5型)の選択、脳内注入量および注入部位の検討を行ない、単回注入で効率良くネプリライシンを発現した5型のリコンビナントAAV(rAAV)ベクターを用いて注入量および注入部位を決定した。さらに、ネプリライシン欠損マウスへrAAV5ベクターを注入することにより、野生型マウスのレベルまで酵素活性を補完することができ、ベクター注入後少なくとも6ヶ月間までこの酵素活性の上昇が持続することが判った。本年度はこれらの実験結果を踏まえ、遺伝子導入後の海馬内Aβレベルの変化について検討した。その結果、rAAV5を用いたネプリライシンの遺伝子導入は、ネプリライシン欠損マウス海馬で上昇したAβレベルを野生型マウスのレベルまで完全に回復することができ、さらにアルツハイマー病モデルマウスへ遺伝子導入した場合にも、生化学的および病理的なAβの蓄積を抑制できることが明らかになった.このように脳内ネプリライシン活性を高めればAβレベルが低下することがin vivoで実証され、今後アルツハイマー病の予防・治療に向けて脳内ネプリライシンの発現を調節する薬剤の開発へと研究が波及することが期待される。また、今回の実験的遺伝子治療法は理論的に人間にそのまま応用できるものであり、若年発症型のものを含めて全てのアルツハイマー病患者の根本的な治療法となる潜在力があると考えられる。
|