研究概要 |
高齢化社会の進展と共に生活習慣病は増大している。これらは遺伝的素因に環境因子が加わった多因子病であり、生体側と環境側の双方の関与要因を明らかにする事が必要である.生活習慣病の発症、進展には活性酸素の関与が示唆される。呼吸での消費酸素の数%が活性酸素となるとされ、細胞内ミトコンドリアにおける活性酸素産生が、加齢や寿命などの生命の基本、更に退行性疾患に関連するがその詳細は明らかではない。 本年度は、種々のミトコンドリア呼吸阻害剤投与によるメタロチオネイン産生がミトコンドリアの活性酸素産生を介する事の解析をおこなった。 前年度では脱共役剤2,4-ジニトロフェノール(DNP)、アンチマイシンAのマウスへの投与によりメタロチオネイン(MT)合成が観察された。しかし、活性酸素産生がミトコンドリアでおこる事とMTの関係が充分に明らかでなかった。そこで、(1)異なる作用機序をもつミトコンドリア呼吸阻害剤を投与するといずれもMT合成と過酸化脂質増大がみられ、ミトコンドリアで共通しておこる反応を示唆した。さらに、(2)ミトコンドリアに局在するトリカルボン酸回路の一つである酵素の基質であるコハク酸は、競合阻害剤の一つであるマロン酸投与によるMT合成を完全に抑制した。この事はマロン酸投与によりミトコンドリアにおける電子伝達が阻害され、活性酸素産生がおこり、MT誘導へ導いた事を示している。(3)呼吸阻害剤投与によるメタロチオネイン産生が他の要因による可能性がある。例として炎症反応があるが、線維芽細胞にDNPを添加すると、MTmRNAの発現がみられた事から、ミトコンドリアで産生された活性酸素がMT誘導に導いたものと考えられる。 また、ミトコンドリアで活性酸素産生を経て誘導されたメタロチオネインは、野性型線維芽細胞とMT欠損型線維芽細胞にDNPを加えて比較するとNF-kBの活性化発現を調節している事が示された。
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