研究課題/領域番号 |
14370780
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
赤池 昭紀 京都大学, 薬学研究科, 教授 (80135558)
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研究分担者 |
香月 博志 京都大学, 薬学研究科, 助教授 (40240733)
久米 利明 京都大学, 薬学研究科, 助手 (10303843)
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キーワード | 神経細胞死 / 興奮毒性 / 活性酸素種 / ビタミンE / NMDA受容体 / D-セリン |
研究概要 |
グルタミン酸およびラジカルストレスにより誘導される中枢ニューロンの変性・細胞死を制御する機構として、内在性低分子量化合物の役割について検討を行った。1.4種類のビタミンE同族体について、過酸化水素により誘発される線条体ニューロンの細胞死に対する効果について検討したところ、α-、γ-およびδ-tocotrienolは有意な保護作用を示したが、α-tocopherolは無効であった。Tocotrienol類はsuperoxideドナーやNOドナーによるニューロン死の誘導も有意に抑制し、グルタチオン枯渇によって誘導されるDNA断片化をも抑制した。さらに、staurosporineにより誘導されるアポトーシス性細胞死はα-tocotrienolによってのみ有意に抑制された。以上のことから、一部のビタミンE同族体は抗酸化作用とは異なる機序を介してニューロンのアポトーシスを妨げることが示唆された。2.Krebs液中に維持した大脳皮質組織切片にNMDAの処置あるいは虚血(酸素およびグルコースの除去)負荷を行うことによって誘導されるニューロン死は、NMDA受容体グリシン結合部位の遮断薬であるDCKAによって顕著に抑制された。NMDA適用時や虚血負荷時にグリシンあるいはD-セリンを添加してもニューロン死の誘導は促進されなかったことから、大脳皮質組織中では内在性のグリシン部位リガンドが十分量供給されていることが示唆された。また、D-セリンを選択的に分解する酵素D-amino acid oxidaseの適用によってNMDAおよび虚血誘発ニューロン死はほぼ完全に抑制された。したがって、大脳皮質においてはD-セリンがグリシン結合部位の主要な内在性リガンドとして働き、興奮毒性に伴うニューロン死の誘導に重要な役割を担っていることが示唆された。
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