研究概要 |
我々は、スフィンゴシン1-リン酸(sphingosine 1-phosphate ; Sph-1-P)の血管生物学における重要性を明らかにし,その測定を臨床検査医学へ応用することを目標としている.今回,当初計画した次の事項に関して,重要な結果・知見を得ることができた.1)血管内皮細胞・血管平滑筋細胞における,(Sph-1-P受容体としての)EDG受容体の情報伝達機構の解明:EDG-1優位の内皮細胞,EDG-5優位の平滑筋細胞それぞれの情報伝達機構の解析を行った.過去の報告を確認するとともに,内皮細胞におけるEDG-5の軽微な発現が,遊走反応の制御に貢献しうることを明らかにした(Osadaら,2002).また,平滑筋のEDG-5受容体をその拮抗剤によりブロックすることにより,収縮反応を顕著に抑制することができることを明らかにした.将来のその治療的臨床応用に道を開くものある(投稿中).2)血管内皮細胞・血管平滑筋細胞上のEDG受容体発現の,種々の条件下における変動の解析とその制御機構の解明:内皮細胞のEDG受容体が炎症性サイトカインTNF-αにより劇的に制御されることを明らかにした(Osadaら,印刷中)3)血管内皮細胞におけるSph-1-P脱リン酸化反応の解析:内皮細胞上には強いSph-1-P脱リン酸化活性が存在することが判明した.4)Sph-1-P測定法の開発:Sph-1-Pのアミノ基をo-フタルアルデヒドと反応させ,発せられる蛍光を測定することによりSph-1-Pを定量する系が確立した.血漿検体測定を進めている.また,イムノアッセイ法でも測定できる目途がついた.
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