研究概要 |
我々は,スフインゴシン1-リン酸(sphingosine 1-phosphate ; Sph-1-P)の血管生物学における重要性を明らかにし,その測定を臨床検査医学へ応用することを目標としている.今回,当初計画した次の事項に関して,重要な結果・知見を得ることができた. 1)Sph-1-Pによる血管平滑筋細胞の収縮反応の惹起とその際の受容体を介する情報伝達機構の解明:Sph-1-PはEDG-5(SlP2)受容体さらにはRho/Rhoキナーゼを介してヒト冠動脈収縮反応を惹起することを明らかにした(Ohmoriら,2003).さらには,活性化血小板に由来する種々の生理活性物質の中で,このSph-1-Pが特に血管平滑筋細胞収縮惹起因子として重要であることを確認し,すでに詳細な機能が明らかとなっているトロンボキサンA2と相補う形で作用を発揮している可能性を提唱した(Ohmoriら,2004). 2)ラット肝実質細胞においては,Sph-1-pが増殖抑制作用を呈することを明らかにした(Ikedaら,2003) 3)Sph-1-p測定法の開発:Sph-1-pのアミノ基をo-フタルアルデヒドと反応させ,発せられる蛍光を測定することによりSph-1-Pを定量する系が確立した.新しい抗SPh-1-P抗体を用いてイムノアッセイの系を確立し,Sph1-Pスタンダード標品は再現性高く正確に測定できることを確認したが,スフィンゴミエリンが多少ながらも測定系に影響することが判明し,臨床検査として使用することは困難と考えられた.
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