研究概要 |
1.目的 プリオン病の早期診断法確立のために、感染から発症に伴うマーカー分子を同定する。 2.方法 ddYマウスに変異型プリオン(Fukuoka-1株)を脳室に注入すると、約16週間後に発病し種々の運動失調をきたす。このモデルシステムを用いて、プリオン感染から4週、8週、10週、12週、14週、および16週ごとに心臓採血を行い、低速遠心で血餅を除去して血清サンプルを得た。さらにスピンカラムを用いて血清アルブミンと免疫グロブリンを除去してタンパク定量を行った後、一定量のサンプルを2次元電気泳動法により分析した。1次元目にpH4-7の等電点ゲル、7次元目に12.5%ポリアクリルアミドゲルを用い、Sypro Ruby染色した後、画像解析を行った。質量分析用のサンプル調製のために、クマシーブルー染色したゲルから目的とするスポットを切り出し、トリプシン消化したペプチド断片をゲルスポットから溶出した。 3.結果と考察 プリオン感染から経時的に採取した血清タンパクサンプルを2次元電気泳動で比較分析することにより、感染後8週から出現するpH5付近の分子量約90,000にあたるタンパクスポットを同定した。このスポットは、週齢が進むにつれてより酸性側、高分子量側にシフトしていくことから、感染に伴ってリン酸化などの化学修飾が亢進するような性質を持つと類推された。この他、分子量25,000、pH4付近の領域に出現するスポットも見出した。これら感染から発症に至るまでに新たに現れたスポットに含まれるタンパク質を同定するために、さらに大量の血清サンプルを調製し、より大型のゲルを用いて2次元展開を行った。引き続き、質量分析計にかけてde novoシークエンス情報を収集し、得られたスペクトルデータと合致するタンパク質をデータベース検索により同定する。
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