カナダの看護師によって開発された高齢者の残存能力を測定する尺度〔the Abilities Assessment Instrument略してAAIと呼ぶ〕を和訳してわが国に紹介した〔痴呆症高齢者の残存能力を高めるケア、174ページ、医学書院、2002〕。同尺度〔AAIと呼ぶ〕を和訳して、日本の臨床現場で活用されるべく、関東および九州の老人ホームやデイケアにおいて、ここ数年間、述べ100人の認知症高齢者を対象に測定してきた。その結果を基に、本和訳版の信頼性および妥当性について検証を重ねた結果、現時点において修正版43が完成した。そのプロセスと同尺度の信頼性と妥当性についての検証結果は米国の看護研究専門雑誌にて目下査読中である。 この修正版を用いて、東北大学は川島隆太教授および、くもん学習療法センターと共同研究を行った。準実験法の下で、学習を介入として認知症高齢者の残存能力を介入前と後3ヶ月および6ヶ月の3時点において測定した。AAIの他に、Frontal Assessment BatteryおよびMini Mental State Examinationを用いた。その結果、AAIによる測定結果に有意差がみられた。また、学数回数とAAIスコアとの間に一定の相関がみられた。一方、FABとMMSEを用いた結果には有意差および相関はみられなかった。 以上より、AAIは初期の認知症高齢者の残存能力を測定する上で有効であることが分かった。さらに学習介入法を用いたことで、学習療法は、少なくとも6ヶ月間行うことで効果がみられることも判明した。よって、AAIは、初期の認知症をもつ高齢者を対象としたスクリーニング目的として活用できる。AAIを用いることで、認知症をもつ対象者の早期発見・早期介入につながり、当事者やその家族の健康維持・促進に寄与できると考える。
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