研究概要 |
平成16年度は、研究代表者が4月1日より東京から大阪に職場を移動したこと、及び、海外研究協力者の一人であるKim Sunah准教授(延世大学、韓国)が平成16年1月から1カ年間、米国長期出張が重なったために、研究計画の修正を加えながら、下記の事項を実施した。 1.今年度はとくに韓国の文化理解と人権擁護意識に関する資料収集に焦点をあてた。新しい職場における初年度のために、研究代表者は平成14,15年度のような海外出張の機会を持つことができなかったが、国内において(とくに関西という地理的条件から)、これまでに得られなかった韓国の歴史的・政治的状況における一般的な人権意識についての知見を得た。また、儒教文化の影響による家族関係のあり方が、医療従事者と患者との関係および人権意識に反映することが新たに分かった。 2.日本国内における医療従事者の患者アドボカシーに関する意識調査は、数箇所の医療機関(精神病院及び一般病院)で働く看護職・社会福祉職を対象に、訪問・面接調査を行なった。看護・福祉を問わず、医療機関で患者アドボカシーを実践するには、患者権利擁護という側面と同時に、医療者と患者のネゴシエイターとしての役割発揮が重要であることが指摘された。また、医療機関内で人権侵害に相当する事態に直面した看護職との面接では、個々の職員レベルの意識以上に、職場風土の問題が大きく横たわることが明らかになった(人権擁護もしくは倫理に関して、個vs組織の葛藤が生じることがある)。 3.平成15年に新たに成立した心神喪失者等医療観察法に関連しては、日本における法律制定までの司法精神医療に関する動向と患者人権擁護に関する問題点を整理した。その成果は、平成16年9月末英国オックスフォードで開催されたThe 10^<th> International Conference of Network of Psychiatric Nursing Researchにて発表した。(Hayama, Y.& Komatsu, Y. : New forensic mental health system and the care for the mentally ill offenders in Japan.)
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