I.侵襲的治療を受けた人々への退院時の思いと状況に関する調査 1.退院患者への面接調査 都内2施設(癌専門病院、地域中核総合病院)において、全身麻酔による開腹、開胸手術を受け、研究参加への同意の得られた29名に面接ならびに病歴調査を行った。面接内容は許可を得て録音、逐語録へ転記した。 退院時の思いは、同じ病棟、プロトコールに添った治療、退院基準に沿っていても、<安心して迎える><心配不安を担えたまま><もう少し入院を望む><むしろ早く退院したかった>の4つの異なるパターンに分かれた。 2.退院患者の病歴調査 上記対象者の入院経過の分析より、手術患者にとっての退院とは、栄養供給状況(経口、粥食)、体動(歩行、昼間の座位・立位)、苦痛の軽減(持続治療の必要がない)、患者の同意、家庭状況(世話する家族が居る)などを、総合的に判断していることが明らかとなった。退院は、医師からの提案の形で告知され、患者の意思を表だって問われることは少なかった。そのことが、様々な感情を抱えたまま退院する人たちの思いとなり、このことは退院後の生活にも、様々な面で影響を及ぼしていた。
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