研究概要 |
近年のわが国の科学研究制度の変化は著しいものがあったといえる。この変化は研究基盤に大きな影響を与えているにもかかわらず,現場の研究者にとってこの「変化の全体像」は極めて分かり難いものとなっている。こうした状況の中で,競争的環境に投げ込まれ,社会的貢献を迫られている個々の研究組織では,国家の科学技術政策を批判する余裕もない形で研究目標や研究プログラムを立案する傾向さえ見えはじめている。 本研究では,昨年度に引き続き,産官学の各種試験研究機関に焦点を合わせ,その歴史的特性と1970年代から現代に至るこうした「変化」の過程を総合的に分析し,かつ欧米や途上国におけるこの期に「変化」と照合し,わが国の科学研究制度の課題や問題点を抽出することを目的に資料の調査と収集を実施してきた。結果として,特に次の諸点を明らかにしてきた。 (1)行政府における各種試験研究機関の独立行政法人化の経緯,怯人化後の目的,組織,予算,運営,研究活動,教育活動およびそれらの成果等に関する基礎的資料を収集した。 (2)民間研究機関のこの期の対応,運営,予算,研究活動およびそれらの成果等に関する基礎的資料を収集した。 (3)先進国および途上国について,わが国の科学技術基本計画と同等の科学技術政策の存在の有無を含め,科学技術政策,科学技術行政の変化について基礎的調査を実施した。 (4)特に「最先端」あるいは「戦略的」分野といわれる科学技術研究分野については,国際的に新たな連携と競争の枠組みが確立されつつあるが,そうした枠組みと国際的協調の特徴を明らかにし,グローバル化時代における科学技術制度の有り様を検討した。 (5)科学技術政策の近年の「変化」は,一面で戦時体制下の研究開発制度と酷似しており,改めて戦時下における各種研究機関の対応の検討が必要不可欠であることが認められたので,戦時下における科学技術政策等の基本的資料を収集するとともに,その特徴を検討した。
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