研究概要 |
本研究の最終目的は運動時のオレキシンが脳幹の青斑核の刺激を介してストレス反応や循環応答を調節するだけでなく,下位の脊髄を刺激し,特に抗重力筋のトヌスの維持や筋組成の維持に貢献しているかどうかを検討することを目的としている.今回はその第一歩として,遊泳ストレス時のストレス反応をまず検証し,さらに,筋の形態的な特性について,オレキシン脱落マウス(OXTG)を用いて検討した.明らかにすることを目的とする.その際,遺伝子導入によるオレキシン脱落マウスを用いて検討した.オレキシンの脱落は生後の週齢の進行に伴い顕著になるが,自発的な運動量が低下する傾向がみられた.これは輪回し回転ケージでみられた最初の知見である.OXTGの脳の活性をみる上で,まずストレス反応を調べた.OXTGマウスならびに正常マウスを30分間遊泳させ,その際のストレス反応について血中コルチコステロンならびに,ストレス原因因子である視床下部CRH(コルチコトロピン放出因子)の遺伝子発現から検討した.遊泳ストレス(これは予めトレーニングをしていない)は,コルチコステロンの分泌応答ならびにCRHの応答には影響を与えなかった.果たしてこれが走運動でも起こるかどうかは現在検討中である.次にOXTGマウスの後肢筋(ヒラメ筋,足底筋,腓腹筋,長内転筋など)を調べた.その結果,視床下部内のオレキシン脱落が顕著になる10週齢以降のマウスにおいて,抗重力筋(ヒラメ筋,長内転筋)のうち,長内転筋の有意な相対筋重量(体重当たり)の低下傾向がみられた.しかし,この筋におけるミオシン重鎖の組成には影響を与えなかった.これらの結果は,成熟期のオレキシンの欠損により,情動反応を伴うストレス反応には差はみられないが,筋緊張の維持機構に何らかの障害がでる可能性を示唆する.次年度では,実際に走運動ストレスモデルを用いて,脳の活性化の度合いをさらに詳しく検討する.
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