研究概要 |
本研究は,「成長期の運動や不活動が,その後の生涯にわたる筋機能の発達・維持に影響を及ぼすか?」を主命題とし,特に骨格筋の成長を強く抑制する成長因子ミオスタチンの発現と,筋の幹細胞である筋サテライト細胞の動態に着目して運動や不活動の効果を調べることを目的とした。本年度はまず,マウス(C57BL/6J)の成長期中期(4〜8週例)に4週間にわたり,1)除負荷(尾部懸垂),2)上り坂走(トレッドミル),3)下り坂走,のそれぞれの刺激を与え,その後通常飼育に戻して,後肢筋におけるミオスタチン発現量と筋線維あたりのサテライト細胞数の変化を4週間にわたって経時的に測定した。その結果,上記の実験群および対照群のいずれにおいても,ミオスタチン発現量は5〜8週齢で低値となり,成長速度が低下する12週齢で著しく増大するという同様の傾向を示し,成長期におけるミオスタチンの発現が,力学的環境要因にはあまり強く影響されず,遺伝子上にプログラムされている可能性が示唆された。しかし、サテライト細胞の数については,除負荷群では,対照群に比べ有意な減少が,2種の運動群では対照群に比べ有意な増大が見られた。また,除負荷群では,筋重量が他群に比べ有意に低下し,その後の4週間の通常飼育によって他群と同レベルまで回復したものの,筋線維数は他群より有意に少なかった。これらの結果から,成長期の除負荷が,筋の増殖や再生そのものについては,その後も持続する影響を及ぼすことが示唆された。これらの結果をもとに,次年度では,成長期の除負荷直後から4週後までのさまざまな時点で運動負荷を与えた場合のサテライト細胞数の変化,およびミオスタチンやIGF-Iなどのいくつかの成長因子の動態について調べ,成長期の除負荷の影響についてより詳細な検討を加える予定である。
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