研究課題
身体運動のプログラムは大脳皮質運動野で形成され、興奮性の刺激として連動神経を介して骨格筋に伝達される。運動神経が骨格筋細胞に付着して興奮が伝達される部分は神経筋接合部(NMJ)と呼ばれる構造体を形成し、電気的刺激を化学的刺激に変換して興奮を伝達している。NMJは筋線維タイプ別に異なる形態的特徴を有しており、除神経による興奮性刺激の消失や、伸張性収縮や薬物投与などによる筋細胞の崩壊に伴い構造破壊が進行する。我々は、運動神経を液体窒素により凍結し、骨格筋を一時的に除神経にする方法を利用して、NMJの超微細構造の形態変化を電子顕微鏡及び共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡により観察することにより、NMJ崩壊後の再形成過程の形態的特徴を検討した。従来の除神経の方法では、NMJの再形成過程を観察することは困難であったが、神経凍結法では、神経細胞の機能回復に伴う筋細胞の再形成過程を継時的に観察することが比較的容易である。神経凍結に伴いNMJの構造破壊が進行し、1週間後には第2次間隙がほぼ完全に消失した。軸策内部のシナプス小胞及びミトコンドリアも継時的にほぼ完全に消失した。これらのNMJの退行性変化には、筋線維タイプ別の大きな差は認められなかった。神経凍結2週間後には、ほぼ完全に構造破壊が進行したNMJは、それ以後急速に形態が回復した。この形態変化は間接刺激による張力発揮の回復パターンと極めて類似した変化であった。神経凍結3週間後の時点で間接刺激による発揮聴力は完全に回復し、NMJの形態も完全に回復した。NMJは運動神経の興奮性性刺激の消失に応答して容易に形態が崩壊するが、崩壊したNMJは興奮性刺激の回復に伴い再構築されることが明らかとなった。
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