研究概要 |
本研究の目的は,現在に近い過去の自然状態において,河川中・上流域ではどれだけの土砂が削剥・生産され,相対的下流域にはどれだけの量の土砂が運搬され,また海浜を含めた河川下流部にはどれだけの量の土砂が散布されつつあるのかを示すことにある。 河川下流部については,宮城県七北田川下流部に注目し,地形調査を行うとともに,放射性炭素年代試料の採取および年代測定を行った。とくに潟湖埋積過程把握において不可欠な完新世後期の海面微変動を復元するための年代試料を,考古学分野の研究者と協力して採取した。これらにより河川最下流部において,河川運搬土砂による潟湖の埋積と海面変動との時期的な関連について検討するための資料を得た。また,同地区に位置する活断層の最終活動時期を特定するために,地下堆積物を簡易ボーリングにより採取し,年代の特定を行った。これらの仕事と関連させ,同地域においてこれまで関係諸機関で行われてきた土質調査時の柱状図を,多方面で使用可能なデータベースとして整理した。一方,我が国でも最大級の海岸砂丘である庄内砂丘において,完新世中期〜後期における砂丘砂層堆積量の算定のための地下地質調査および年代測定を行い,砂丘砂量の算定に必要な砂丘砂層下限深度についての情報を得た。 河川上流部として位置づけられる山地斜面での崩壊の発生要因および時期を特定するため,自然斜面および降雨実験装置による観測結果を比較し,降雨-流出過程と土層の透水性の関係についてのデータを得るとともに,過去の降雨による崩壊発生位置について再検討を行った。同時に,斜面崩壊発生と地表を被覆する植生との関連について,基礎的なデータを得るため,花崗岩分布地域において種々の土質特性についての調査を行った。
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