研究概要 |
本研究の目的は,現在に近い過去の自然状態において,河川中・上流域ではどれだけの土砂が削剥・生産され,相対的下流域にはどれだけの量の土砂が運搬され,またどのような地形変化が生じたかを示すことにある。平成15年度は,河川下流部,中流部,上流部において以下の調査・研究を実施した。 河川下流部においては松本が野中らと共同して,阿武隈川下流部臨海低地において自然堤防-旧河道地形について調査を行うとともに,放射性炭素年代試料の採取および年代測定を行った。自然堤防-旧河道地形は河川中・上流部で生じた土砂が臨海沖積低地に散布されてきた状況を示す地形であり,これらの調査・分析から,臨海沖積低地への土砂散布は完新世後期の海面微変動と何らかの関連をもってなされてきたことが求められた。これにより河川最下流部において,河川運搬土砂(洪水氾濫)による潟湖の埋積や低地の形成に関して,海面変動との時期的な関連を検討するための重要なデータを得た。また,平成14年度に引き続き,土質柱状図のデータベース作成を行った。 河川中流部において,平野,松本,小岩ほかは,丘陵地斜面の崩壊や人工地盤の流亡などによる土砂移動に関する現象について,2003年7月26日に発生した宮城県北部地震等の事例をもとにその発生メカニズムに関する資料を得た。 河川上流部においては,小岩が氷期の土砂生産と河谷の埋積との関わりを解明するための地形野外情報を収集した。河川源流部の土砂生産およびそれを促す土層内および地表での流出の発生については,田村が古田ほかと共同で,丘陵地内に設けた試験地や降雨実験装置を用いて実験斜面での観測を行う一方,その時代的変遷をたどるため観察・測量を山地内で実施した。
|