研究概要 |
本研究は,活断層の地形学的特徴をもとに提示された地震モデルを主要活断層と地震断層を対象に実証的に検証し,地震危険度評価と強震動予測手法を確立しようとするものである.研究代表者らは,活断層の平面形態と横ずれ断層の断層線沿いの縦ずれ分布パターンから,断層破壊開始点と破壊伝播方向および地震の際に活断層が一括して活動する区間(セグメント)を推定する手法を提案し,活断層発地震時に一括して活動する活断層の範囲を予測する「形態単位モデル」を提示した. このモデルが,日本列島およびアメリカ西部やニュージーランドに発達する活断層において適用可能かどうかを検討した上で,日本列島の主要活断層については,研究代表者らによって作成された活断層詳細デジタルデータをもとに破壊開始点や伝播方向および断層系(帯)のセグメント区分を行い,強震動予測のためのパラメータとして発展させるとともに,公共施設や文化財の地震危険度予測に応用した.日本では活断層から200m以内に位置する教育施設が1000以上存在することを明らかにしするとともに,国宝などの重要文化財については活断層との位置関係および活断層から発生する地震による地震動の大きさを具体的予測した. 中四国地方を対象に,「形態単位モデル」をもとに起震活断層となる可能性の高い活断層を見直し,隔てられた位置に発達する長者ヶ原断層と芳井断層の不連続部で微細断層変位地形を発見し,両断層が一括活動する可能性が高いことを明らかにした.また,1943年鳥取地震では,地震断層が出現し鹿野断層と吉岡断層以外に鳥取市東部の活断層が関与したとを明らかにした.さらに,強震動予測パラメータを作成し,四国中央構造線活断層系を例に,シナリオ地震による特性化震源モデルを複数構築し,シナリオの設定の違いが大規模地震動の合成波形に及ぼす影響を,地震動の時刻歴波形と速度応答スペクトルを用いて評価した.
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