研究概要 |
1.兵庫県関宮町大沼湿原(標高810m)の湿原堆積物の性状と年代を,精密電気探査,深度25m及び65mのオールコア・ボーリング,深度6mまでのハンド・ボーリングにより,以下のように明らかにした.湿原堆積物は大きく4層に区分され,深度3〜4mが泥炭,4〜17mが泥炭を挟む粘土(湖成層主),17〜63mが崩積成及び河成のシルト・砂・砂礫,63m以深が河成のシルト・腐植質粘土から構成される.17m以浅の泥炭・粘土には,上位からK-Ah(約6,300年前),U-Oki(約9,300年前),大山ホーキ(約2万年前),AT(約2.5万年前)の4枚の広域テフラが挟まれ,深度10.Omと12.4mの木片からは,36,130±250yBP,32,160±230yBPのAMS^<-14>C年代が得られた.一方分光土色計で測定した泥炭・粘土の明度(L^*)はノコ波状の周期的変動を示し,上記の年代に基づいた堆積速度曲線から,ヤンガー・ドライヤスなど数百〜千年オーダーの変動を表現していると考えられた.これにより,大沼湿原堆積物の粒度組成,炭素含有量,炭素-イオウ比,帯磁率,花粉組成などの分析から,酸素同位体ステージ3以降の過去約6万年間にわたる詳細な古環境情報が得られることが確実となった. 2.古地磁気変動を復元するための定方位サンプリング手法を開発し,沖積粘土を対象にテストを実施した.その結果,コア・サンプラー固定部の改良や,サブ・サンプリングの補助器具の必要性が明らかになり,開発手法にさらに改良を加えた.次年度以降は,この改良手法により深度17m以浅の堆積物の定方位試料を採取し,過去約6万年間の詳細な古地磁気偏角・伏角変動を明らかにしていく.
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