研究分担者 |
佐藤 裕司 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (80254457)
兵頭 政幸 神戸大学, 内海環境教育研究センター, 教授 (60183919)
八木 剛 兵庫県立人と自然の博物館, 自然・環境評価研究部, 主任研究員 (40311485)
半田 久美子 兵庫県立人と自然の博物館, 自然・環境評価研究部, 主任研究員 (20311483)
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研究概要 |
兵庫県大沼湿原で採取された1本のオールコア試料と,3本の定方位ボーリングコア試料の各種分析を進め,以下の結果を得た.1)テフラ分析により深度17m以浅の湿原堆積物中に上位からアカホヤ火山灰(K-Ah),阪手火山灰(Sakate),大山弥山軽石(MsP),大山下のホーキ火山灰(Sh),姶良Tn火山灰(AT),大山偽ホーキ火山灰(Nh)を識別・対比し,23層準で得られたAMS-^<14>C年代値に基づきSakate〜Nhの各テフラの降灰年代を推定した.Nhは降灰年代がはじめて推定され,ShとMsPでは従来と異なる降灰年代が推定された.2)花粉分析により大沼湿原周辺における約4万年前以降の植生変遷史を復元した.これにより,約2〜4万年前の中国山地の標高500m以上の地域における古植生に関する資料が新たに得られた.3)定方位コアの古地磁気の安定性を分析した結果,深度8〜8.8m間の古地磁気は不安定であることがわかり,この間に推定された地磁気エクスカーションを確定できなかった.しかし,新規開発した定方位サンプリング手法の有効性と,約3〜4万年前の古地磁気測定結果が日本の地磁気永年変化の研究に貢献できることが確かめられた.4)高密度で測定したAMS-^<14>C年代値に基づき,コア堆積物の深度-年代モデルを作成した.このモデルにより堆積物の色調(反射率),粒度組成,熱損失量と,花粉分析の結果を整理し,それらの時間変化を最終氷期中の地球規模の気候変動と比較した.各環境指標の変動時期は,グリーンランド氷床で認識された亜氷期-亜間氷期や,北大西洋高緯度地域で認識されたハインリッヒ・イベントと一致する.しかし各時期での変動パターンは一致しておらず,湿原というシステム内での環境指標の挙動を把握することが,今後の課題となった.5)これらの成果は,カナダでの国際学会や,2005年度の日本花粉学会や名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウムにて報告した.
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