研究概要 |
1.固体食品の口腔内における力-変位曲線をヒトの第一大臼歯の義歯内に埋めた圧力センサーによる力の測定と,義歯の咀嚼中の変位測定から描くことができた.被験者を測定装置に束縛しないで自然摂食の状態で,摂食から咀嚼に至る過程での食物が砕かれ,つぶされ,唾液と混合される食物の力-変位曲線を口腔内で求めることができた. 咀嚼第1回目の口腔内の力-変位曲線(A)は,成形された食品が口中で咀嚼により変形するので機器による同じ食品の圧縮変位曲線(B)と比較される量である.口腔内の(A)の力が,機器による(B)の力より大きい食品が圧倒的に多く,30種類の食品中(B)の破断点の力の方が明らかに大きい食品は羊羹だけであった.第1大臼歯の食品を圧縮する速さの最大値は,50mm/s前後であり,機器による圧縮速度の10倍以上速いことが理由の1つと考えられた.臼歯の表面の凸凹は,破断点での力の低下には影響を与えていないことが確かめられた. 口腔内の力-変位曲線は,3〜5噛み以降定性的には食品の特性は消失し,小片となった食品が臼歯でつぶされる力の最大値に食品による違いが示されるだけであった. 2.ゲルを咀嚼するときの口蓋圧は,舌で押しつぶせる軟らかいゲルでも,噛んで咀嚼する硬いゲルでも嚥下にマイナスの口蓋圧パルス,すなわち1気圧より減圧したパルスが生じていることが示された.マイナスパルスの時間積分値は,軟らかいゲルでは小さく,硬いゲルでは大きくなる傾向であった.嚥下時に口腔内にもマイナスの圧力が生じ,口腔の奥ほどマイナスは大きくなっていることが示唆された. ゲルの粘弾性値との関係を知るために摂食するゲルの温度5℃の粘弾性測定を試みたが,購入した装置を5℃に保つときに流す空気による乾燥が見られ,冷却装置の改善を行う必要が生じた.
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