研究概要 |
1.第1大臼歯が欠損している被験者に圧力素子を埋め込んだ義歯を装着して,自然に近い状態で咀嚼過程における臼歯に生じる力を測定してきたが,被験者の歯列の状態が変ってきたので新たに圧力素子入りの義歯を歯科医に依頼して作成した.較正のための圧力変換器を改良設計して,精度良く簡便に較正できるように改善された. 生人参など硬い食品から羊嚢,チーズ名と軟らかい物まで,口の中で20種以上の食品の口に取り込んでから飲み込みに至るまでの第1大臼歯による力-変位曲線を得た. (1)食品の破断点,すなわち1噛み目の最大咀嚼力が小さい食物類が老人に好まれる食物類と一致した. (2)口腔内の力-変位曲線は,多くの食品で3〜5噛み以後食品の特徴的なヤング率,破断点などを示さなくなった.変位の最大値の近辺に,口腔内の食品の重要な特性値の1つの噛み切りにくさを表す最大咀嚼力が出現した.当然のことではあるが,食品が破砕されて小片になっても噛み切りにくさは変わらないことが口中で力学特性を測定することによって証明された. 2.微生物多糖のジェランを材料としてゼリーを作り,食べるときの口蓋圧と動的粘弾性の特性値とを比較検討した.食べることが前提にあるので,砂糖を添加した牛乳ゼリーを作ったが,牛乳中のカルシウムによりジェランゼリーのテクスチャーが大幅に変化したので,試料として採用しないこととした.砂糖10%添加のゼリーを用いて口蓋圧を測定したところ,2%以上のゼリーでは噛んで食べることが示された.舌で潰して食べる限界の1.5%ゼリーの機器測定による破断応力は,30kPa程度であり,寒天,ゼラチンの潰して食べる限界破断応力にほぼ一致した. ゼリーの水の1/3をりんごジュースに変えて,クエン酸を加えたゼリーは,0.05%で保形性がありゲル状であった.0.02-0.5%濃度のジェラン試料で,G'は10-10000Pa, G''は1-1000Paと大幅に変化し,0.01-10Hzの範囲で周波数依存性はなかった.0.5%以下の濃度で3桁に及ぶG',G''の周波数依存性がなく変わることは,テクスチャーを変化させる天然の添加剤として,今後有効な活用が期待された.
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