研究概要 |
本研究は大別して,A.音声数式入出力インターフェース開発,B.点字数式入出力インターフェース開発,C.数式ペン入力・数式OCRとそれを組み込んだ数学教育用エディタ開発の3つの部分からなる。本年度はそれぞれについて,次のような研究を行った。 A.ではまず,本研究で音声化の対象としている数式エディター"Infty Editor"の音声による利用環境をさらに整備するため,日本語FEPの音声化を行つた。次に英語版Infty Editorの音声化にも取り組み,英語による数学記号・構文の読みを定義し,それに基づく音声化を行った。今回のモデルでは,日本語版と英語版がユーザー設定により切り換えられるようになっている。さらに,数式音声入力に関する基礎研究も行い,簡単な数式であれば音声で入力出来ることを確認した。 B.については,点字使用の視覚障害者のために点字による数式入出力ユーザー・インターフェースを開発する基盤として,世界各国まちまちである理数系点字記号を国際的に統一する方法論を開発した。コンピユータの世界統一文字コード体系であるUnicodeに点字記号を割り付けることにより,点字記号を世界的に統一することが可能となる。また,この方法論に基づき,統一日本語点字記号第2版の開発を行った。この研究成果は,平成16年3月29日からカナダのトロントで開かれる国際英語点字協議会の世界会議において発表する予定である。 C.ではまず数式OCRについて,主として数式中の接触文字や分離文字の認識手法について研究し,全体の認識率向上に関する研究を行った。縦・横・斜めに切断候補位置を検索し,文字認識を実行して切断位置や分離文字統合を行う手法と,同一文書中の非接触・非分離文字パターンとマッチングする手法を併用することにより,数式領域でも約7割程度の接触・分離文字の認識が可能になった。次に数学教育用のエディターについて,数学や理系教育用途に特化した,作図及びグラフ表示を行うソフトウェアを開発した。このソフトウェアでは次のステップでは,編集した図やグラフの音声読み上げ機能を付与できるように,XML形式の内部データを利用している。これを今後Infty Editorに組み込み,視覚障害者も利用できるソフトウェアに発展させていく予定である。
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