研究概要 |
平成14年度は、幼稚園英語教育における教師のヒューリスティックス分析のための理論的枠組みの構築、データベース構築のためのデジタル化作業の準備、及び、指導者の意志決定に関する記述的研究のためのプレ調査分析に重点を置いた。 まず、指導者のヒューリスティックス分析にあたり,量的・質的授業研究の分析手法,及び社会文化的アプローチによる授業場面ならびに指導者の考察や信念(teacher beliefs)の分析手法に関する就学前学習者を対象とした理論的枠組みを構築した。基本的な枠組みとしては、Spada, N. & Frohlich, M.(1995)によるCOLT(The Communicative Orientation of Language Teaching Observation Scheme)による授業分析手法を採用した。そして日本における幼稚園英語教育での実情とCOLT方式採用の妥当性を求めるために、杉野が録画した幼稚園での授業を全員で観察しながらオリジナルのCOLTに忠実に授業分析を試みた。 この結果、幼稚園での英語教育の活動は、学習者の日常に即したプロジェクト・ワークやネイティブスピーカーと日本人の指導者によるティームティーチングが行われており、小学校英語教育と共通する点が認められた。中学校以上の英語教育との差異を考慮して、COLTを変更・修正した改訂版(the COLT Modified Version : COLT-Mod)を作製した。オリジナルのCOLTは、授業活動を記述するとPart Aと言語行動におけるコミュニカティブな志向性を分析するPart Bからなる。COLT-ModではPart Aを基本として、Part Bの項目を移動、既存項目の削除、及び新項目の付加を行うことで作成された。 次に、データベース構築のためビデオ撮影された授業をデジタル化し、活動毎に分割して編集、DVD化した。そしてデジタル化された活動毎にCOLT-Modによる授業分析をプレ調査として行った。この結果、COLT-Modは幼稚園における英語授業の分析に有効であり、量的な分析のみでなく、Part Bも取り入れたことで質的な分析も可能であることが示唆された。これらのデータベースの構築ならびにデジタル化、その分析の作業は次年度以降も継続していく。またプレ調査の結果に関しては、平成15年度に学会発表が予定されている。
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