研究課題/領域番号 |
14380123
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大瀧 慈 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (20110463)
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研究分担者 |
佐藤 健一 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 講師 (30284219)
和泉 志津恵 広島大学, 放射線影響研究所・統計部, 研究員 (70344413)
甲斐 倫明 大分県立看護科学大学, 教授 (10185697)
丹羽 太貫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (80093293)
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キーワード | 多標的モデル / 細胞死 / 個体差 / 線量反応関係 / 年齢依存性 / 遺伝的不安定性 |
研究概要 |
1.多標的モデルでの発がん危険度の線量反応関係と年齢依存性について 複数の遺伝子を標的とする多標的モデルにより多段階発がん仮説に関する数理モデルを構築した。発がんに関わる遺伝子のうち、複数のケア・テイカー遺伝子および腫瘍抑制遺伝子は劣勢に、一方、がん遺伝子は優性に作用することを想定した。ケア・テイカー遺伝子の損傷や異常発現がゲノム全体の遺伝的不安定性を誘発し、その後持続的に細胞内で生じる遺伝子損傷や異常発現の危険度を増大させること(いわゆる遺伝的不安定性仮説)を仮定して、細胞内での変異の蓄積過程を時間変動ポアソン過程により定式化した。その結果導出された数理モデルによれば、放射線を含む付加的曝露は発がんの任意の段階に作用し影響を与えること、1個のがん細胞から臨床的診断の対象になりうる腫瘍の出現までの期間(腫瘍の生長期間)を無視した場合、がんの罹患の危険度は、特定の付加的な曝露を受けていない背景的曝露の下で、年齢のベキ乗に比例して増大すること、さらに、多くの原爆被爆者の被曝状況のように付加的な単一急性曝露を被曝した場合には、閾値の無いほぼ直線的な線量反応関係が得られること、そして、その超過相対危険度は、被曝時年齢が若いほど大きく、また、到達年齢が高くなるとともに単調に減少することが示唆された。 2.染色体異常によるイニシエーションおよび遺伝的不安定性の生起への影響に関して 我々は、放射線誘発のAML2番染色体異常の欠失がイニシエーションとして働き、その後、遅発性の細胞死によって損傷細胞がアポトーシスに至るか、AML細胞に進展するかのモデルをたて、実験および数理モデルの両面からアプローチを行っている。実験上は、明白な不安定性は観察されていないが、発がんの時間的発症分布を説明するには放射線の遅発性効果を考慮することが必要であることを確認した。 3.発がん危険度の個体差に対する揺らぎ構造について 「Armitage-Doll発がんモデルと大瀧ら(2001)が提案した発がんモデルを基底として、個体差を取り入れたガンマ揺らぎモデルと逆正規揺らぎモデルの一般化線形モデルをそれぞれ導きだし、数値実験と原爆被爆者の固形がん罹患データを用いて解析を行った。
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