研究概要 |
平成14年度は,交付申請書の項目〔A〕〜〔D〕に対応して,以下の成果を得た. 1.データパスのアルゴリズムを形式的に記述・検証することを可能にする算術アルゴリズム記述言語(Arithmetic Description Language)"ARITH"の基本仕様を決定した.まず,抽象文法とメタ記法によるARITHの仕様定義(構文と意味)を与えた.これとは独立に,本研究グループが提案する進化的グラフ生成システム(EGG)を用いた加算器および定係数乗算器合成システムを構築した. 2.非2進数系に基づくハードウェアアルゴリズムは,その高速性と引き換えに配線量が増加するトレードオフが存在する.この配線に関する制約を大幅に緩和するために,多値符号化されたデータを直接的に電流で表現する多値双方向電流モード回路技術を検討した.これはSD数演算アルゴリズムの実現のために本研究代表者らが提案した回路方式であるが,系統的な設計手法が知られていない.基本的な電流モード多値論理ゲートの機能を整理・抽象化するとともに,EGGによるSD数加算器のゲートレベル設計の自動化に成功した. 3.上記ハードウェアアルゴリズムの応用分野として,本年度は高速・高精度画像照合技術について検討した. 4.人工触媒素子(Artificial Catalyst Device)のモデルを定式化した.本素子は,溶液中の反応を選択的に触媒し,その触媒活性が特定のエフェクター濃度の非線形関数として変化するものとした.将来的には人工触媒素子を集積化し,配線によらない超並列処理を実行する新しい集積回路が実現できると考えられる.その基礎実験として,集積化マイクロ電極アレーを試作した.可逆なレドックス分子を情報担体として,その生成・消滅を多数のマイクロ電極で制御することにより,人工的な反応拡散場が形成できることを実験的に検証した.
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