研究概要 |
計算機処理や通信の対象として,実世界の3次元空間情報や画像情報が,比較的容易に利用できるようになってきた.たとえば,レーザスキャナによるレンジデータやCTなどによるボリュームデータ,デジタルカメラやデジタルビデオなどによる画像情報など,実世界のデータが急速に増加している.一般に実世界の形状・画像情報はデータ量が多く,計算機処理の負荷が大きいばかりでなく,ネットワーク上での通信にも適していない.そこでデータ量を落とすために実世界データを解析して必要とされる特徴量を適切に抽出する手法や,抜き出された特徴量をもとに元のデータを復元ないし補間する手法が必要となる.本研究では次元間の横断処理という概念をもとに,実世界データを統一的に処理する手法を考察する.特に「画像情報の補間法」,「形状・空間情報の解析法」,「形状情報の補間法という3つのサブテーマを設定して研究を進めている. 第一のサブテーマである画像情報の補間法に関して,今年度は射影空間を利用して複数枚の2次元実写画像を3次元的に補間する手法である「視点モーフィング」と2枚の2次元画像から絵画風画像のシーケンスからなるアニメーションを生成する「絵画風モーフィング」について研究した.視点モーフィングでは未校正カメラから得られた画像間の対応関係をつけることが問題となっていた.そこで画像を曲面として捉え,臨界点(特異点)間の対応から画像の対応関係をつける手法を開発した.つぎに絵画風モーフィングについては,ブラシストロークと呼ばれる一筆ごとの筆跡の重ね描きによって絵画風画像を生成するが,このブラシストロークをキャンバスという2次元平面に配置する代わりに3次元空間に配置する手法を検討した.これによって従来の手法では問題となったコヒーレンシーの問題を解決し,アニメーションの品質を改良することに成功した.第二のサブテーマである形状・空間情報の解析法については,「ボリュームデータの可視化手法」を手がけた.具体的には対象となるn次元形状とその断面形状(n-1次元)の変化を,微分幾何学的な見地から関連づける手法を考察し,ボリュームデータの可視化手法へと適用した.第三のサブテーマである形状情報の補間法(モーフィング)では,厳密な意味での補間ではないが,複数視点から見え方に合わせて対象形状,特に地形などの形状を変形する「デフォルメ透視投影」について検討した.
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