研究概要 |
分散システムのエージェント数は既にギガで測られる時代にあり,テラの時代が近づきつつある.事実,ギガで測られる個数のサイトがインターネットに組織されている.ホームページ検索エンジンGoogleは3.08×10^9個のホームページを検索可能であり,その数を急速に伸ばしている.また,DNA計算を,部分解の選択/連接を行うためのエージェントとして物理分子を用いる計算であると捕えると,おおよそ10^<15>個の分子が一つの分散システムを構成する.本研究が検討の対象とするのはこのような巨大な分散システムである.巨大分散システムは,エージェント数が巨大であるという理由から,1)各エージェントが無視できない程度にシステムの動的な変化が大きくなるにも関わらず,2)各エージェントが収集可能な局所情報が大域情報に占める割合は相対的に小さくなるという特徴を持つ.このような特徴を持つ巨大分散システムの安定性を吟味することが本研究の目的であった. 本年度は,主に,安定性の概念を検討するとともに,従来の安定性の概念との関連を検討した.すなわち,分散システムの統計的な観点からの安定性の概念の確立を目指して,分散システムの動作をランダムウォークによってモデル化した上で,その振る舞いを解析し,統計力学的手法によって分散システムの動作解析を行うことを検討した.その結果として,文献に上げてあるような結果を得たが,もちろん,検討は始まったばかりであり,ほとんどの課題が未解決で残されている.一方,別のアプローチとして,従来の手法の自然な拡張も考察した.すなわち従来の意味での,自己安定アルゴリズムを,巨大分散システムへの応用という立場から検討した.
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