研究概要 |
研究実施計画に従い,以下の研究を進めた. 1)対話の共感性:i)CGで描画されたエージェントを対話相手とした場合,被験者の心的状態が不快であるときには,エージェントが不快表情の会話に対して被験者はより肯定的な反応を示すことが分った.一方,被験者が快状態であるときには,エージェントの快/不快表情の影響はなく,対話者との気分一致効果は,対話者が不快であるときのみに生ずることが分った.このことは,向社会的傾向(エージェントからの依頼に対する肯定的反応)においても同様であることを示した. 2)感性情報:i)感情音声の知覚面からの研究は殆んどない.STRAIGHTをベースとしたモーフィングにより,憾情音声の心理連続体を構成し得ることを示し,感情音声知覚のカテゴリー性について検討した.その結果,感情音声知覚はカテゴリー的でないことが分った.また,多次元尺度評定実験から求められたデータから感情音声の心理空間上の布置を明らかとした.ii)上記モーフィング技術を異話者間に対しても適用し得るアルゴリズムを開発した.評価の結果,異なった話者間でのパラ言語情報の転写では,かなりの品質劣化が伴うことが分ったため,その解決を目指した研究を進めている. 3)音環境の実現法と評価:i)音源定位の能力は,両耳間レベル差では,刺激信号の種類によらず広帯域のほうが高いこと,両耳間時間差では,刺激信号の種類や帯域中によらないことを示した.ii)ヘッドホン受聴の場合,両耳間レベル差による正中面定位はイメージ音像のラウドネスを増加させるが,両耳間時間差ではその影響がないことを示した.拡声受聴では,両耳間時間差,レベル差ともに音像定位方向とラウドネスの関係は殆んどなく,実音源によるラウドネスが大きいことが分った.iii)音場伝送方式の実現に必要な音源数を音源の定位と音の拡がり感,音像の大きさの観点から明らかとした.
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