研究概要 |
本研究では,ユーザが手にし,それを持ち変えて観測している物体を装着型視覚センサでとらえ,その物体の3次元形状,及び,表面情報を復元する手法の確立を目指しており,本年度得られた成果は,以下の通りである. 1.把持物体の全形状復元のための距離画像の高精度張り合わせ:物体表面の局所構造を保持する距離画像の張り合わせ手法を考案した.本手法では,距離画像での近傍の計測点を用いて,局所的な面の形状パターンと対応の歪係数を導入し,誤った対応を取り除くと同時に面の局所構造を保持する張り合わせを実現している.合成画像や実画像を用いた基礎実験により,従来手法に比べ,正確で頑健な張り合わせを実現できていることを確認した. 2.把持物体の表面反射特性の推定:対象物を手で持ち変える前後で得られた画像群の明度情報を解析して,環境中での照明の強度と物体表面の反射特性との両方を推定するアルゴリズムを開発した.ここでは,対象物を手で持ち変えて得られた時系列画像から物体の形状を復元し,その情報を利用して,照明強度と物体表面の反射率を推定している.本手法は,特に,複雑な分布をもつ一般照明下において反射率を正確に推定可能であるという点において従来手法にはない特長を備えている. 3.装着型能動視覚センサを用いた自己運動の推定:装着型能動視覚センサを用いて,装着者の頭部運動を推定するアルゴリズム考案した.本手法では,2台の装着型視覚センサを独立に注視点制御することによって注視点の対応を自動獲得し,さらに注視点周辺のオプティカルフローを利用することで,装着者の頭部運動を推定する.注視点間の距離の違いによる推定精度の評価実験を行い,注視点間の距離を大きくとればとるほど,推定精度が向上することを確認した.
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