研究概要 |
状況認知・判断・決定に許される時間が十分ではない人間・コンピュータ協調系の例として,低速域アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)システムによる先行車追従制御を取り上げ,リスク環境でのシステム監視制御にあたる複数の主体(人間,コンピュータ)間での状況認識共有化を図りつつ,状況に応じた自動化レベルを持つ安全制御に有用な多層インタフェースを構築した.具体的には,低速域ACCシステムを利用しての走行中を想定し,先行車と自車とのさまざまな相対関係を表す数十種類のシナリオのもとでの被験者(ドライバ)の認知・判断・行動パタンの抽出ならびに心的負荷の同定,状況認識支援が必要となる状況の同定を行った上でACCシステムの減速機能限界を提示する警報インタフェースを構築し,ドライバが警報をいかに利用するか,欠報によってその利用方策がいかに変化するかを解析した.また,コンピュータの制御意図がシステム状態表示に自然な形で組み込まれ,ドライバとACCシステムとの間での状況認識共有を可能にするために,追従対象として捕捉した先行車の有無のみを表示するインタフェース及びACCのセンサ検知範囲を表示するインタフェースを低速域ACCの動作理解を支援する情報として構築し,その効果を認知工学的実験によって解析・評価した.さらに多層インタフェースとして,ドライバのリスク認知が欠如した状況においての緊急時安全を確保するための権限委譲方策を数種類提案し,離散事象シミュレーションによってそれらの有効性を解析・評価し,いわゆる「人間中心の自動化」の枠組みから外れるものの中に,安全確保の観点から有用なものがあることを証明した.
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