研究概要 |
企業のIT投資効果の発現プロセスを明らかにすることを企図した第2回IT経営度調査は,本研究班と(株)経営科学研究所(以下,MSI)との共同プロジェクトとして,従業員500人以上の企業3200社の経営企画担当を対象に年9月から11月にかけて発送し、有効回答415社2003年2月末現在)を得た。第2回IT経営度調査調査票は、フェイス情報などを加えれば470項目で構成されている。一方,MSIとの共同調査とは独立に,2002年11月中小企業調査を実施し、中小企業調査は有効回答76社を得た。更に、郵送調査データ以外に、 (株)商工リサーチデータベースから、直近の従業員数、3期分の売上高、利益、配当といった財務データを500人以上の全企業ならびに、中小企業調査で発送した企業について購入し、調査データとリンケージを行い、分析用データセットを構築した。これ以外に平成14年12月に医薬品産業、平成15年10月には特定の金融機関に特化した調査を行った。特に、後者の調査では、各機関のIT設備、システム監査などの情報を別途入手し、分析用データセットを構築した。 実証研究は、筑波大学大学院ビジネス科学研究科の修士・博士の学生の研究仮説を分担者の研究指導の下に、代表者が個別企業情報を保護する形でデータ分析を行った。本研究は、結果として修士論文4本、博士論文1本に結実している。この中で既に外部に発表した成果としては、トップの意識、マネジメント並びに情報部門とマネジメントの連携、技術力などがIT投資の効果発現をどのように修飾するかといった因果構造の解明、IT投資やIT研修投資の全要素生産性への影響の有意性(ITパラドックスの検討)、e-ビジネスが企業価値を生み出すプロセスの明確化、IT投資に関わる戦略が企業生存に与える影響などがある。この他,ITシステムの導入形態・開発組織などのIT効果への影響、金融機関のIT投資、従業員のIT能力向上が経営にどの程度寄与しているかも、既に明らかになっている。 上記因果分析とは別に,MSIと共同でIT経営の総合尺度であるIT経営度の開発も行った。IT経営度に基づく企業評価については新聞・雑誌などのメディアでも報道されている.
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