研究概要 |
本研究は,米国の軍事気象衛星DMSPが日々捉える地表面夜間可視画像を利用し,既存の社会経済統計よりも高い空間解像度と更新頻度で社会システムの状態をモニタリングする指標としての都市光分布を抽出する手法の開発と,その地震被害想定への応用を目指している。 DMSPの可視センサが捉える都市光分布と,人口,GDP,電力消費量といった社会経済統計の空間分布との間には,強い相関があることが知られている。本研究では,大量の観測画像の重ね合わせにより,作業者バイアスを避け,かつ周期的なゲイン調節の影響や,雲,雷,ノイズを除去し,衛星観測の即時性を活かして都市光分布を作成する手法を提案した。検証の結果,既存の都市光抽出手法にもとづき得られた都市光分布と比べ,本手法によって得られた都市光分布の方が,より多くの各市町村庁所在地点を捕捉できることが確認されている。この手法によれば,1万人以上の人口を持つ市町村を90%以上捕捉できていることを明らかにした。 本研究で提案する抽出手法から得られた都市光分布と,国勢調査や事業所統計にもとづく人口・建物棟数の関係を1kmメッシュ単位で分析し,都市光分布から,被害ポテンシャルを1kmメッシュ単位でモニターする手法を提案した。その結果をもとに,2035年前後の発生が危惧されている南海・東南海・東海地震のような巨大災害においては,南海・東南海・東海地震が同時に発生した場合の被害想定が行われている。想定の結果,一部損壊以上の被害を受ける建物棟数は27万棟,死者数は8千人におよび,そのほとんどが静岡県内に集中するという結果が得られた。
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