研究概要 |
平成15年度は,大陸棚斜面上におけるエッジ波の発生とその伝播特性を考慮した津波警報解除の決定基準を得る基礎情報として,エッジ波の予測に必要な計算条件を明らかにした.また,平成15年9月に発生した十勝沖地震津波の事例研究から,北海道南東部でマグニチュード8クラスの巨大地震が発生した場合の最大津波到達時間の地域分布を求めた.以下に得られた結論を列挙する. (1)北海道太平洋岸で発生するエッジ波の予測には,500m以下の空間格子間隔を選択すれば十分な精度が得られることが分かった.また,500mの空間格子間隔を用いて2003年十勝沖地震の再現計算を行った結果,エッジ波の予測に十分な精度をもつことが分かった. (2)十勝沖地震津波では,室蘭からえりも岬にかけての西岸と浦幌から花咲にかけての東岸で第1波よりも第2波以降の津波が高くなり,顕著なエッジ波が発生していたことが分かった. (3)えりも岬から浦幌にかけての屈曲した海岸は,津波波源から至近距離にあるためにエッジ波は発生しなかったものの,この海岸に反射した津波のエネルギーが外洋へ放射されずに,エッジ波として大陸棚上で乱反射しながら東に向かい,浦幌から花咲にかけて津波振動の継続時問を長くする役割をもつことが分かった.また,広尾港から釧路にいたるエッジ波の走時曲線を求めた結果,エッジ波の沿岸方向のエネルギー伝播速度は約10m毎秒であることが分かった. (4)北海道南東部で発生する巨大地震による津波を想定し,エッジ波の最大波来襲の予測時間に関する基準を得た.特に,室蘭・浦河間と浦幌・花咲間の予報区では津波の最大波到達時間が地震発生後から3時間以上になる.これらの予報区では地震発生後6時間は津波警報の維持が必要であることが分かった.
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