研究概要 |
大陸棚に津波が入射した場合,その入射角によってエッジ波が励起され,大陸棚上での乱反射を繰り返すことにより振動が長期化する傾向がある.津波予警報の精度向上は,第1波や最大波の到達時刻・波高の予測精度に加え,津波振動の減衰特性の予測精度も,予警報解除の意思決定の観点から重要である.16年度は,15年度に得られたエッジ波の予測精度の検討結果を応用し,南海トラフで発生する巨大地震による津波の減衰特性を評価した.津波波源に近い三重県太平洋岸のいくつかの地点を除き,津波の振動は少なくとも6時間以上継続することが分かった. 次に,2004年スマトラ島沖で発生した巨大地震津波,およびインド洋スンダ海溝沿いのプレート沈み込み帯で発生しうるM9クラスの巨大地震による津波の数値解析を実施し,インド洋沿岸部の津波増幅特性を,海底地形との関連で評価した.スンダ海溝に沿って発生し得るM9クラスの巨大地震による津波のエネルギーの指向性は,波源域の位置により,ベンガル湾およびミャンマーに向くタイプI,タイ・スマトラ島・スリランカ・モルディブに向くタイプII(2004年型),スマトラ島・ジャワ島を直撃するタイプIII,オーストラリア西岸に向くタイプIVの4タイプに分類できることが分かった.シミュレーション結果の可視化により,タイプIではベンガル湾奥の大陸棚,タイプIIではタイ西部の大陸棚およびスリランカの島周辺,タイプIVではオーストラリア西岸の大陸棚が,津波のエネルギー捕捉と局地的な増幅に寄与することが分かった.
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