研究課題/領域番号 |
14380218
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
渡辺 国昭 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 教授 (50001326)
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研究分担者 |
原 正憲 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 助手 (00334714)
波多野 雄治 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 助教授 (80218487)
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キーワード | 核融合炉 / 低放射化材料 / バナジウム合金 / 水素同位体 / ブランケット / チタン / 表面 / 透過障壁 |
研究概要 |
V合金は核融合炉の低放射化を図るために有望な材料であるが、水素同位体の透過速度が大きいという欠点もある。この種の合金と水素同位体の相互作用に関する報告例はこれまでにもあるが、水素同位体の吸収・放出が表面状態に極めて敏感であるためデータのばらつきが大きい。昨年度までにV-4%Ti合金について、厳密に制御された条件下で水素同位体の吸収実験および表面分析を行い、Tiの表面偏析が水素同位体挙動に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。本年度は同様の実験をV-Cr-Ti合金について行い、Crの影響を調べた。 高純度V-4%Cr-4%Ti合金板材(核融合科学研究所提供)より試料を切り出し、(1)機械的に研磨、あるいは(2)機械的に研磨したのち1273Kで1時間真空加熱、という2種類の表面処理を行った。これらの試料の水素吸収特性を、昨年度購入した設備備品により作成した真空装置を用いて、523〜1023Kで調べた。加熱処理を行った試料の水素吸収速度は、研磨のみの試料に比べ2〜3桁小さな値を示した。また、吸収の活性化エネルギーは、加熱処理を行うことにより14.9kJ/molから46.6kJ/molに増大した。なお、これらの試料の水素吸収速度と活性化エネルギーは、同様の処理を行ったV-4%Ti合金試料のものと同程度であり、Crの影響は小さいことがわかった。また、熱処理により水素吸収速度が低下したのは、熱処理中にTiが表面偏析し、この表面偏析Tiが選択的に酸化されたためであると結論した。得られた水素吸収速度から表面反応律速を仮定して透過速度を見積り、従来の報告値と比較したところ、機械的研磨のみの試料は報告値のばらつきの上限値を、真空加熱した試料は下限値を与えた。すなわち、Tiの偏析挙動などの表面状態を詳細に把握することにより、従来の報告値を系統的に整理・理解できる可能性が見出された。
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