大型ヘリカル装置(LHD)に設置されているトムソン散乱計測器は非常に明るい光学系と多数(200)の空間チャンネルを有し、これにより高精度・高空間分解能電子温度分布測定が可能で、これまでいろいろな興味ある電子温度分布上の構造を提示してきた。今年度は、新たに、プラズマベータ(プラズマ圧力と磁気圧の比)が大きくなると、回転変換角/2π=0.5付近に電磁流体力学的不安定性に起因すると考えられる三山構造が現れることを観測した。分布測定精度を上げるため、散乱光分析用ポリクロメータのスペクトル感度を光パラメトリック発信器(OPO)からの短パルス光源を用いて較正する方法の開発を開始した。これにより、昨年度までに観測した磁気島自己消滅現象、磁気島内の膨らんだ電子温度分布、内部輸送障壁的急峻電子温度分布を改めて確認することができた。電子温度と同時に電子密度分布測定を開始した。そのために必要な各ポリクロメータの相対感度較正が、観測窓の大気側に設置した硫酸バリューム白色反射板によるOPO拡散反射光を用いることにより、簡便に行なえることを予備的に確認することができた。実験期間中に観測窓に付着する物質が観測窓の透過率を波長に依存する変化を与えることを確認し、それによる電子温度・密度の系統誤差が高温度では無視できないことを確認した。また、高密度プラズマ放電時のダイバータ視野領域からのプラズマ光量は光検出の動作領域を超え、これにより電子温度分布上に見掛けの構造が現れることがあることを確認した。明るい光学系の要である大反射ミラーは長期的に安定であることを確認した。
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