LHDトムソン散乱装置の高性能化・高精度化を進め、研究開始前に比べ格段に高品質の電子温度(Te)分布が、また不完全ながら電子密度分布(ne)も、測定できるようになった。これによりLHDプラズマの多様な電子温度・密度分布を顕わにし、以下の現象論的知見を得ることが出来た。 1.外部不整磁場による真空磁気島がプラズマ中では自己収縮・消滅することを高い精度で再確認すると同時に次のようなことを明らかにした。(1)自己収縮・消滅の様子には磁気軸位置依存性があり磁気丘が大きくなる内寄せ配位では自己消滅しにくい。(2)磁気島幅は電子温度(或いはプラズマ圧力)上昇に従い小さくなる。(3)真空磁気島幅には閾値があって、これを超える大きい磁気島はTeが高くなっても消滅しない。(4)磁気島消滅に対応するプラズマ電流が確かに存在している。 2.Te分布上の折れ曲がりは周辺のみでなく内部にも出現す。折れ曲がり点を境にして輸送特性が異なるように見える。 3.エネルギーの異なるレーザを用いて、ノイズに由来する見かけのTe分布上の構造を明らかにすると共に、フィラメンテーションに似た、磁気軸に対して非対称で急峻なTe分布上の構造が実際高い確度で存在することを示した。 4.ベータ(プラズマ圧/磁気圧)の上昇に伴い、Te分布上の平坦・小山状構造物が中心から周辺に動いて行くことが分かった。Te分布の弱磁場側でのみ現れる崩壊的平坦部はバルーニング様不安定性を示唆している。 5.また、凹状Te分布、磁気島部分で膨らんだ温度分布、階段状Te分布、ペレットが誘起した内向き電子束が阻止される現象、などを観測した。 予定していたz方向トムソン散乱計測を簡単な仕様を変更し、磁気軸20cm下方主半径に沿ったTe-ne計測を通して磁気島の2次元的性質の研究を行う予定である。
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