研究概要 |
本研究においては、人体形状数単ファントムとモンテカルロシミュレーション法を用い、非均質外部被曝様式を対象として、(1)ビーム状高エネルギー電子線に対する換算係数(入射放射線の単位フルーエンス当りの実効線量)を求め、(2)ビーム状ガンマ線・陽電子腺に対する換算係数を求めた。その結果 I.【計算体系の構築と特性計算】(1)購入したマイクロコンピュータ内にMIRD-5型人体形状ファントムやEGS-4(電磁カスケードモンテカルロシミュレーションコード)を導入し、電子線やガンマ線のエネルギー付与過程を計算できる体系を構築した。 II.【電子に対する非均等被爆計算】(1)入射エネルギーは100keV-200MeVまでの11点を選んだ。照射体系はAP照射およびPA照射とした。照射面積は人体全面積の1/10,1/2,1倍の4種類、照射位置はそれぞれの照射面積に対して、8カ所,5カ所,1カ所とした。(2)これらの計算の結果、部分的に照射される非均質照射では、急激に実行線量が増大する入射エネルギー値が存在し、それは、照射位置ごとに異なり、また、照射面積にも依存していることが分かった。 III.【光子対する非均等被曝計算】光子では、(1)換算係数の光子エネルギー依存性は100keV以下で全身照射と異なる特性を示す部分照射がある。しかし、それ以上ではほぼ同一の特性を示す。(2)また、例えば1/10照射においては、換算係数の値は全身の値の1/3-1/10となり、照射面積比に一致せず、照射位置やエネルギーに依存していることがわかった。 IV.【陽電子線に対する非均等被爆計算】陽電子では、(1)照射位置依存性や線源サイズ依存性、エネルギー依存性等に関して、電子の場合と類似した結果を得た。(2)しかし、いずれの計算においても消滅ガンマ線による違いが示された。すなわち、電子と同様に1MeV以下では陽電子自体は皮膚にしかエネルギーを付与していない。しかし、陽電子の場合には消滅ガンマ線が発生するため、1MeV以下においてもPA照射では乳房、睾丸、胃など、PA照射では赤色骨髄等多くの身体内部の臓器にエネルギーが付与される。その結果、AP照射では2MeVまで、PA照射では10MeVまで陽電子に対する換算係数のほうが電子に対する値よりも大きくなることが分かった。
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