研究課題
加速器施設で生成する放射化物中の放射性核種の濃度を測定する方法を確立することは、放射化物の合理的取扱および処理を行ううえで非常に重要である。特に、コンクリートは加速器施設のデコミッショニングにおいて最も大量に発生することが予想されるため、その検認手法の確立が不可欠である。コンクリートは金属に比べてその組成が複雑でかつ、分析のための試料の処理が難しいことから、コンクリート放射化物中に含まれる可能性があるβ線や低エネルギーのγ線・X線のみを放出する測定が難しい核種について評価法を確立することに重点を置いて研究を進めてきた。これまでに測定困難核種であるトリチウム、Cl-36について分離、定量する手法を確立し、加速器施設からの試料収集をすすめ、実際にそれらの試料の分析を行ってきた。以上の実験により、電子加速器、ハドロン加速器にかかわらず、放射化は主に二次的に生成する中性子の捕獲反応に起因すること、γ核種とトリチウムやCl-36の深度分布は同様の結果を示すことが確かめられた。また、熱中性子反応で生成する核種の放射能の強度は低エネルギー加速器では深さ約10cmのところに極大を示した。しかし、高エネルギー加速器では深さとともに指数関数的に減少する様子が観測され、他の反応の寄与が増大していることが示唆された。しかし、それぞれの核種の生成比は類似していた。以上のことを確認するために、本機構において高エネルギー中性子の照射場を作り、実際に金属やコンクリートを照射し、生成収率の測定を進めた。また、Cl-36は各加速器の運転された期間中に発生した総中性子量を求めるのに有効であることが分かった。次に、電磁石などの金属の放射化の程度をサイクロトロンおよび電子シンクロトロンで測定し、銅、ステンレス、鉄材において主要なガンマ核種はCo-60であることが確認された。本研究成果をもとに、今後Ni-63、Fe-55などの難測定核種の定量法を確立するとともに、コンクリートおよび金属材料中での放射性核種の濃度の相関を求めていく必要がある。また、簡易な検認手法の開発、シミュレーション技術の開発など引き続き研究を進展させる必要があると言える。
すべて 2004 その他
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Radiochimica Acta (In press)