研究概要 |
平成15年度は,次の成果を得た: 1.雲水量と日射量の観測から求められる雲の光学的厚さと平均粒径についての推定手法の検討を昨年度に引き続き行った.幾つかの仮定のなかで,雲の水平均質の条件が最も推定に影響すると予想されることから,今年度はこの仮定を緩和する為に狭視野日射計の製作を試みた.従来の全天日射計による狭視野化は感度が不十分であることから,全波長積分型で感度増強型の狭視野日射計とした.この日射計の特徴は,全波長積分により従来の直達日射計と同様の手順で検定可能であり,日射量の絶対値を計測することが可能なことである.全天視野から狭視野(12°)に変更したことに伴う解析ソフトの変更が必要であり今後観測と並行してこれらを行い,従来手法との比較を試みる予定である. 2.SKYFETで展開しているsky radiometerと日射計の組み合わせにより,エアロソルの日射に対する直接効果の評価を試みた.中国の3地点(敦煌,銀川,合肥)での結果は,光学的厚さに対応して5%から20%程度の範囲で変動しており地域差が顕著であることが分かった.エアロソルの光学的性質についても,場所による違いが見られ,平均的な複素屈折率の違いで表すことができ,その虚数部をみると敦煌では周年0.005より小さく,他の場所ではこれより大きく冬季の銀川では0.02に近い値が得られた.現在出版準備中である. 3.地表面放射収支の基礎量の一つである日射量の推定をGMS-5データによって行っている.本年度は推定値の精度検証を行った.第一段階として快晴日のケースを精査した.Sky radiometerによるエアロソルの光学的厚さとマイクロ波放射計による可降水量の推定を併せて,衛星推定アルゴリズムによる値,異なる放射伝達計算手法による値,及び地上観測値を総合して評価した.その結果,アルゴリズムに問題のあることが明確となり改修中である.
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