研究概要 |
平成16年度は以下の研究成果を得た. [GMS-5を用いた放射収支及び雲の放射強制量の高精度評価の為の雲の光学的性質の再検討] これまで,GMS-5を用いて1996年以降の雲量,地表面輝度温度,地表面日射量(収支量)の毎時データを継続的に求めてきた.これらの物理量に対してSKYNET(本研究グループが中心となって,東アジアに展開・運営している高精度雲・エアロソル・放射観測網)による雲・放射に関する各種観測量を利用して,これまで作成したプロダクトの精度評価を行った.その結果,快晴時の推定精度が良好なのに対し,曇天時には,日平均量で50W/m2以上になる大きな誤差が認められる事が分かった.この誤差は短波放射収支に大きな誤差をもたらすことから,その原因究明とアルゴリズムの改善を図った.誤差の要因は,雲の評価,中でもその光学的厚さ推定の正確さにある.この推定に誤差が入る要因には,次のものが予想される;(1)センサーの劣化による感度低下,(2)量子化誤差,(3)推定アルゴリズム,(4)雲自身がもつ非均質性に由来するもの等.センサー劣化については,既に過去に幾つかの研究があり当研究室でも解析を行ってきた.その結果年間数%の割合で劣化を起こしていることが確認された.また,GMS-5と並行して取得されたMODISデータを併用して検討した結果,この誤差を定量的に評価することができた.一方,可視センサーは,6ビットA/D(64階調)変換能力しか持たず,特に低反射率時に高分解能になる様な感度特性を持っている.その結果,薄い雲では比較的精度良く推定できるのに対して,厚い雲では極めて誤差が大きいことが明らかになった.MODISとGMS-5の幾何学的位置の違いは,雲の3次元構造の影響を評価するのに効果的である.同一視野に対するこの影響を評価した.これらの結果は,衛星データの推定アルゴリズムの改善に反映される.
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