研究概要 |
二酸化硫黄(SO_2)は,対流圏および成層圏の大気化学反応において重要な役割を果たしている。SO_2が酸化されてできる硫酸エアロゾルは,対流圏では雨滴に取り込まれ酸性雨として環境に重大な影響を及ぼすとともに,成層圏では太陽光を反射することによって地球の放射平衡に大きな影響を与えている。このように,酸性雨や地球温暖化のメカニズムを理解するうえでSO_2の濃度測定は非常に重要である。本研究では,レーザー誘起蛍光法による高感度SO_2検出装置を新たに開発した。SO_2を励起するための光源には,YAGレーザー励起のOPO (Optical Parametric Oscillator)レーザーとその2倍波を作るBBO結晶を使用した。220nmのレーザー光を用いてSO_2の電子励起状態をつくり,SO_2が基底状態に戻るときに発する蛍光を検出する。蛍光の検出には光電子増倍管を使用する。ゲート積分器を使ってその出力をアナログ積分し,その信号の大きさからSO_2の濃度を測定する。開発したSO_2検出装置の性能評価を,標準試料ガスを用いて行った。最小検出限界はS/N比を2としたとき30秒積算で5PPtvであった。この値は現在SO_2の濃度測定に使用されているパルス蛍光法などの装置の検出限界と比較してかなり小さい値である。このように,OPOレーザーを使用したLIF法による濃度測定が非常に感度が高く,大気中の微量なSO_2濃度を測定するために有用な方法であることを初めて実証した。また本装置はアナログ積分法を使うことで数pptvから数十ppbvにわたる広い濃度領域を測定できる。すなわち,汚染されていない遠隔地の低濃度のSO_2から都市域の高濃度のSO_2まで,1つの装置で対応できることを示した。
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