研究概要 |
1.亜酸化窒素(N_2O)の生成・蓄積に対する硝化と脱窒の役割: 硝化と脱窒によるN_2O生成活性をインキュベーション実験により検討した。硝化によるN_2O蓄積活性は低溶存酸素条件下で高く、一方、脱窒による活性は,低溶存酸素条件下では低い傾向を示した(Limnologyに掲載)。 2.単離したN_2O生成菌の同定・生理試験及びN_2Oの生成に及ぼす硫黄化合物の影響: 汽水湖宍道湖から単離したN_2O生成菌は,Aeromonas sp.及びVibrio sp.と同定された。両菌の至適塩分はそれぞれ0〜20psu及び10〜20psu,至適温度はそれぞれ20〜37℃及び20〜30℃であり,至適pHはいずれの菌も6〜8であった。また,両菌のN_2O生成に及ぼす硫黄化合物(H_2S,S^0,S_2O_3^<2->,SO_3^<2->)の影響について検討したところ,特にH_2S濃度の影響を強く受け,Aeromonas sp.はH_2S濃度1〜5mgS/Lで,Vibrio sp.はH_2S濃度1〜10mgS/Lの範囲でそれぞれ促進作用を示した。またこれらは,硝酸還元を行う一方でH_2SをS^0に酸化する能力を有する興味深い細菌であることが分かった(投稿中)。 3.汽水・海水中のヒドロキシルアミン(亜酸化窒素への中間体)の定量法の開発: 次亜塩素酸ナトリウムを酸化剤に用いてヒドロキシルアミンNH_2OHを亜酸化窒素N_2Oに酸化し,これをECD付ガスクロマトグラフで定量する新規な方法を開発したが(Analytical Scienceに掲載),本法は塩分の妨害を受け,汽水・海水試料には適用できなかった。その後,その原因がBr_2(海水成分中のBr^-がBr_2に酸化される)にあることを見出し,その対処策(本法の改良法)を確立できたことから,汽水・海水にも適用可能となった(投稿準備中)。その改良法を用い,NH_2OHの分布や挙動に関するデータが蓄積されつつある。目下,室内インキュベーション実験の結果と併せて解析中。 4.汽水湖中海における亜酸化窒素生成量の見積もり・総括: これまでほぼ3年間にわたり,中海を代表する2地点を対象に,月1回の頻度でN_2Oの鉛直分布を調べその季節変化を観てきた。生成量の見積もりについて解析中。
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