研究課題/領域番号 |
14380244
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐久川 弘 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (80263630)
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研究分担者 |
堀越 孝雄 広島大学, 総合学部, 教授 (00094102)
桜井 直樹 広島大学, 総合科学部, 教授 (90136010)
中根 周歩 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (00116633)
小林 剛 香川大学, 農学部, 助教授 (70346633)
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キーワード | ヒドロキシルラジカル / 暴露実験 / 酸性ガス / 土壌酸性化 / アカマツ / ディーゼル排ガス |
研究概要 |
今年度は、大気中の硝酸ガス、亜硝酸ガスなどの酸性ガスを測定し、ヒドロキシルラジカル(OH)生成の由来物質である硝酸イオン、亜硝酸イオンの起源について研究を行った。その結果、アカマツの立ち枯れが進行している地域では、大気中の硝酸ガスや亜硝酸ガス濃度が高く、これらが夜間に生成する露中に溶け込み、高濃度の硝酸イオン、亜硝酸が存在している可能性を明らかにした。また、ディーゼル排ガスの捕集液は、光化学的にOHラジカルを生成することが明らかとなった。アカマツ林において酸性沈着物による土壌酸性化やアルミニウム(Al)溶出の影響について評価を行った。その結果、アカマツ衰退地と健全地において、土壌pHに大きな違いは見られず、酸緩衝機能を有する交換性陽イオンについてもアカマツ衰退地と健全地で大きな違いは見られなかった。さらに、土壌に溶出するAlイオンも低濃度であった。これらのことから、土壌酸性化や栄養元素の流出、Alイオンの溶出によるアカマツへの影響は小さいものと推察された。OHラジカルを生成する汚染物質を含む擬似露水をアカマツ苗木に暴露させ、ガス交換速度に及ぼす影響を調べた。その際OHラジカルを消去するマンニトールを暴露液に混合させ、その効果について検討した。さらに、光化学的にOHラジカルを生成するディーゼル排ガスの捕集液を暴露した結果、暴露2ヶ月後、アカマツ苗木の光合成速度はOHラジカルを発生溶液やディーゼル排ガス捕集液の暴露で低下したが、マンニトールを加えてOHラジカルを消去する溶液噴霧では光合成速度の低下を示さなかった。さらに二酸化炭素の固定にかかわるルビスコ含有量がOHラジカルを発生する溶液の処理区において有意に低下した。マンニトール添加によって光合成低下を抑えられた本実験結果は、野外におけるアカマツ衰退の回避にマンニトールが実用化されうることを示しており、アカマツ衰退制御に重要な知見となりうる。
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