地球環境変動が極地湖沼生物相に与える影響評価

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14380258
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 国立極地研究所
• 研究代表者: 神田 啓史 国立極地研究所, 資料系, 教授 (70099935)
• 研究分担者: 大谷 修司 島根大学, 教育学部, 助教授 (50185295) ; 工藤 栄 国立極地研究所, 北極圏環境研究センター, 助教授 (40221931) ; 伊村 智 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (90221788) ; 瀬戸 浩二 島根大学, 総合理工学部, 助手 (60252897) ; 井上 源喜(松本) 大妻女子大学, 社会情報学部, 教授 (80245357)
• キーワード: 湖沼 / 氷河融水 / 塩分 / 堆積物 / DMSO / 微生物 / 細菌 / オアシス

研究概要

東南極のリュツォ・ホルム湾の昭和オアシスは、淡水湖〜高塩分塩湖まで多種多様な湖沼が多数分布する。本年度の研究により約32の湖沼が水質調査および採泥調査の解析の結果、湖水の塩分や堆積物の特徴から以下の4つのタイプに分類された。Type1:氷河融水を直接受ける湖 夏季に多量の氷河融水の流入を受けるため、湖水の塩分は非常に低く、0.02psu以下である。また、水温も低く、夏季でも3℃以下である。Type2:氷河融水を間接的に受ける湖 氷河融水が河川を通じて流入している湖で、湖水の塩分は0.1psu以下の淡水である。冬季の湖水温は3〜4℃である。夏季の後半の短い期間では、約8℃まで湖水が上昇する。Type3:氷河融水を受けず、雪氷の融水のみを受ける湖 流域に氷河のない湖沼で、冬期に積った氷田の融水が流入している湖である。湖水の流入量が少なく、塩分が0.1〜2.0psuの淡水〜低塩分塩湖を示す。湖水温はType2と同様な挙動を示す。Type4:海水起源の湖水で排水口のない湖 湖水面の標高は25m以下で、完新世に海洋から孤立した湖である。更に、南極昭和オアシスのスカルブスネスにあるすりばち池の水からDMSO可能細菌の分離を試み、いくつかの単独コロニーを得た。一方、16SrRNAをPCRによって増幅させ、塩基配列の決定を行い、種の同定を行った。すりばち池の8m試料からは、4種の細菌の存在が示唆された。すりばち池の微生物群集の特徴は、南極ベストフォルドヒルにある部分循環高塩湖、エクホ(Ekho)湖およびオーガニック(Organic)湖の底泥の微生物群集と類似していることが解った。

研究成果

• [文献書誌] S.Ohtani, H.Kanda: "Dronning Maud Land and its environments"Ecological Studies. 154. 51-68 (2002)
• [文献書誌] H.Kand, S.Olitani, S.Imura: "Plant communities at Dronning Maud Land"Ecological Studies. 154. 249-264 (2002)
• [文献書誌] 伊村智, 神田啓史: "南極湖沼底の水生蘚類群落"蘚苔類研究(Bryol. Res). 8・3. 69-73 (2002)
• [文献書誌] 瀬戸浩二, 伊村智, 坂東忠司, 神田啓史: "南極湖沼に記録された完新世の古環境"月刊地球. 24・1. 31-36 (2002)
• [文献書誌] 澤辺智雄, 安田格司, 伊村智, 伴修平: "南極すりばち池の細菌群集構造"第25回極域生物シンポジウム講演要旨集. 59 (2002)
• [文献書誌] 長沼毅, 杉山千乃, 伊村智, 神田啓史: "南極および北極域から単離されたイオウ酸化細菌の炭酸固定酵素(ルビスコ)遺伝子の分子系統的多様性"第25回極域生物シンポジウム講演要旨集. 61 (2002)
• [文献書誌] 東條元昭, 箱田暁穂, 藤井宏和, 星野保, 神田啓史, 大木理: "スバールバル諸島スピッツベルゲン島における雌雄異株性"第25回極城生物シンポジウム講演要旨集. 64 (2002)
• [文献書誌] 東條元昭, Hermann, A.Muhlhauser, 星野保, 藤井宏和, 箱田暁穂, 神田啓史, 大木理: "キングジョージ島から分離される雌雄異株性Pythium属菌の同定(予報)"第25回極域生物シンポジウム講演要旨集. 65 (2002)
• [文献書誌] 伊村智, 神田啓史: "南極昭和基地における土壌細菌モニタリング"第25回極域生物シンポジウム講演要旨集. 80 (2002)
• [文献書誌] 瀬戸浩二, 伊村智: "南極宗谷海岸における湖沼の底質環境と底生植物群"第25回極域生物シンポジウム講演要旨集. 86 (2002)