研究課題/領域番号 |
14380260
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
石崎 寛治 愛知県がんセンター, 中央実験部, 部長 (70111987)
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研究分担者 |
組本 博司 愛知県がんセンター, 中央実験部, 研究員 (00291170)
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キーワード | 低線量率放射線 / テロメラーゼ遺伝子導入不死化 / 正常ヒト細胞 / AT細胞 / 生存率 / 突然変異 / p53遺伝子誘発 / DNA修復 |
研究概要 |
今年度は正常人並びにAT患者由来のテロメラーゼ遺伝子導入不死化細胞をG1期に停止させた状態で高線量率(2Gy/min)、低線量率(0.3mGy/min)放射線を照射し解析を行った。正常人由来細胞の低線量率放射線照射後の生存率は高線量率放射線照射後と比較して顕著に抵抗性を示した。このことは低線量率放射線に照射されている間、細胞のDNA修復能が有効に働くために照射終了までに放射線で誘発されたDNA損傷の大部分が修復されていることを示している。AT細胞では低線量率放射線照射後の生存率と高線量率放射線照射後とに大きな違いは見られなかった。AT細胞はチェックポイント機能に障害があるために放射線に高感受性を示すと考えられているが、この結果はDNA修復能そのものにも欠陥があることすなわちATM遺伝子はチェックポイントと修復の両方に関与することを示唆する。 シグナル伝達系に関して今年度は主にp53蛋白について解析を行った。高線量率放射線では0.3Gyという低線量からp53蛋白の量的増加とリン酸化の増加が顕著に観察された。これに対し、低線量率放射線ではこの様な低線量ではほとんど変化が見られず、1Gy以上からわずかに量的増加とリン酸化が観察されだし、5Gy程度まで徐々に増加した。この結果はG1期の細胞に低線量率放射線を被曝させるという条件ではシグナル伝達系の活性化は非常に小さいことを示している。正常細胞における低線量率放射線照射後の変異誘発頻度は高線量率放射線照射後の変異誘発頻度と比べて大きく減少していた。このことはG1期における修復もこれまで予想されている誤りがちの修復以外の修復が機能している可能性を示唆している。
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