研究概要 |
(1)廃棄物熱処理プロセスシミュレーターによる重金属化合物捕捉実験 本研究では小型パイロットプラントで各種廃棄物をガス化・溶融処理し,発生したダストとガスを雰囲気温度,流量を制御可能なシミュレーター(単一円管)に導入し,これによる反応速度の影響を考慮した重金属挙動の実験的検討を目的としている。平成15年度は,各種廃棄物の中でも特に亜鉛,銅,砒素,鉛などの重金属類を含む有機脱水汚泥(含水率80%)を処理対象とし,溶融温度1400℃で溶融処理した際に発生した重金属含有排ガス(920℃)を,ヒーターによって温度制御されている直円管型の廃棄物熱処理プロセスシミュレーター(石英反応管,長さ1000mm,内径30mm)に導入する重金属化合物捕捉実験を行った。壁面に付着した粒子状物質を温度領域毎に採取し,ICP発光分析装置によって各種重金属ごとの付着量を求めることで,重金属類が蒸気状物質から粒子状物質に移行する温度について検討を行った。その結果,砒素は860℃では粒子化していないのに対して,亜鉛,リン,鉛,銅は割合は異なるものの蒸気状から粒子状物質への移行が確認できた。特に,リンと亜鉛は共に雰囲気温度が低下するにつれて,蒸気状から粒子状物質への移行量はほぼ等しい割合であることから,石英管内においてリンと亜鉛は等しい割合で反応し,化合物を形成していることが考えられる。 (2)シミュレーションによる重金属含有排ガス存在状態の推定 (1)の実験と同じ形のシミュレーターを想定し,これを通過する重金属含有排ガスの平衡状態での存在形態について,熱力学平衡計算によりシミュレーションした。計算結果は実験より得られた粒子化温度を定性的に表現しており,その化合物形態についても計算結果とほぼ一致していることから,石英管によるモデル実験により,実際の煙道内の重金属類存在状態を模擬可能なことが示唆された。
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