研究概要 |
1)1954年から2000年の間に撮影された塔丸と落合峠周辺の空中写真判読から,草地の樹林化が顕著であり,両地域とも1954年には100haほど分布していた草地が,現在では30haほどにまで激減していることがわかった.毎木調査をもとに、分布拡大が顕著であるウラジロモミの生育適地について検討したところ,傾斜10度未満の凹地形以外のところは生育可能であり,また,そのような地形領域は限られていることから,今後もウラジロモミの侵入は続き,2030年には15ha程度にまで草地面積が減少すると推測された. 2)火入れが行われている塩塚高原の草原域163ヶ所で植生調査を行った結果,春季にモザイク状に分布する多様な群落が,夏季から秋季にはススキ群落に置き替わることがわかった。草原域で確認された246種の植物のうち13種が高知県または徳島県のRDB掲載種であり,塩塚高原にのみ残存している種も多かった。一方,1967年の空中写真と比較した結果,樹林化が進行して草地面積が約4分の1に減少しており,また,過去に生育が確認されていたオキナグサ,カキランなどは確認できなかった。これは,火入れ管理の中断期があったことや草地面積の減少によると思われた。 3)石鎚山地の瓶ヶ森と神鳴池,剣山地の落合峠で採取された窪地堆積物の花粉,植物珪酸体および微小炭化片から,次のことが分かった.瓶ヶ森と神鳴池では,少なくとも約6,000年前以降,ブナ,落葉ナラ類が優勢な冷温帯林が発達していた.約2,300〜1,100年前には,持続的な火災撹乱が生じ,森林の一部が破壊され,その跡地に陽生の樹木や草本類が侵入した.調査地のササ草原の成立もこの火災を契機とする可能性がある.落合峠では,少なくとも約600年前以前に,モミ属,ツガ,ブナが優勢な森林が存在した. 4)ワークショップを行うため,住民や行政とのネットワークづくりを開始した.
|